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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)18号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

判断の順序として、まず、主要な争点である本願第一発明と引用例記載の発明との相違点に関する審決の認定、判断の誤りの有無について検討し、次いで、両発明の一致点の認定の誤りの有無について、さらに本願第一発明の作用効果について検討することとする。

1 成立に争いのない甲第二号証(本件願書)によると、本願第一発明は、流動化床を用いる廃液の生物学的処理法、特に、廃水から有機炭素を除去し、生化学的酸素要求量を減らす方法に関するものであり(右願書添付の明細書の発明の詳細な説明の項第二頁第一六行ないし第一八行)、「廃水中の生化学的酸素要求量を減少させるために生物学的組織体を用いる比較的に安価な処理法を提供すること」(同第六頁第一行ないし第四行)、「生物学的組織体の流動化床を用いて同時に床粒子が過剰な生物学的生長によつて過剰に大きくなる傾向を制御して、廃水のBODを減らすこと」(同頁第五行ないし第八行)、「顕著な量の懸濁固体を含む廃水を処理効率を落とすことなく処理すること」(同頁第九行ないし第一一行)、「従来法と比べて高い流速で運転するに適する効率のよい廃物処理法を提供すること」(同頁第一二行ないし第一四行)を目的として、固体粒子担体(固体粒子)に付着している生体及び廃水から形成される流動化床を生成し、十分な酸素を供給して廃水の生化学的酸素要求量を減らし、次いで処理中に担体上に形成された過剰なバクテリア生長物を機械的に除くものである(同第二頁第一六行ないし第三頁第六行)ことが認められる。

このことに前記本願発明の要旨を合わせ考えると、本願第一発明においては、廃水と、有機炭素を酸化するに適う生体を付着した固体粒子担体(固体粒子)とによつて流動化床を形成し、十分な量の酸素を曝気せしめることによつて、廃水と固体粒子とを接触させるものであるということができる。

2 そこで、本願第一発明の流動化床の技術内容をみると、前掲甲第二号証及び成立に争いのない第三号証(本件の昭和五一年八月二〇日付け手続補正書)によると、本願明細書の発明の詳細な説明の項に次のような記載があることが認められる。

「ここで用いられる『流動化床』なる言葉は、適当な大きさの粒子の床を通して該粒子を浮上がらせ、重力の影響にうちかつて、それらにその床内での見かけ(「見けけ」とあるのは、「見かけ」の誤記であると認める。)上の運動を与えるに充分な速度で上に適当な液体を流し、その床はその流れがないときよりも大きな厚さに拡がつているような流れを示すものである。」(本件願書添付の明細書第七頁第一ないし第七行。手続補正書第二頁第一七ないし一九行)

「種付けされた粒子の比重は好適には約一・一以上であり、好適には、このような粒子が流動化床の運転中に系より運び去られないようにするために、少なくとも約一・三である。」(本件願書添付の明細書第一二頁第四ないし第八行)

「流速が床一平方フイート(〇・〇九m2(「cm2」とあるのは「m2」の誤記と認める。)当り八~二五ガロンであるときに良好な結果を得る。(中略)流速は好適には種粒子の大きさと比重について補償するように調節される。」(同第一二頁第一二行ないし第一三頁第二行)

「廃水がカラムにポンプ注入されると、分配多岐管の直接の上の領域が種付け粒子をなくし、最小の成長の床粒子を得ることができる。この界面の高さ(垂直カラムの分配多岐管から種付けされない流動化床の底面までの高さ)は、カラム流速と床粒子の比重の関数であり」(同第一三頁第三ないし第八行)

「廃水Aを円筒カラムBの底部に、カラム底部の多岐管Cを通して導入する。廃水がカラムを通過することによつて生体種付けされた床粒子が流動化し、流動化床Dを形成する。カラムの界面の高さはJで示される。処理された廃水Eはカラムから流動化床を通して排出される。」(同第一六頁第一六行ないし第一七頁第二行)

「床粒子は好適には、種付けされたバクテリヤ薄層を有する。」(同第一一頁第一四、第一五行)

「酸素を直接に流動化床に、或いは供給物と床の双方に注入できる。」(同第九頁第一二、第一三行)

これらの記載からすると、本願第一発明の流動化床は、適当な比重を有し、バクテリア薄層を有する固体粒子をカラムに充填し、この層に、適当な流速の酸素含有廃水を、多岐管を通して、均一かつ上向きで連続的に導入し、固体粒子を廃水中に浮遊懸濁させた状態を意味するものであるということができる。

そして、成立に争いのない甲第六号証(「改訂三版化学工学便覧」(昭和四三年五月一〇日丸善株式会社発行)第一四〇ないし第一四三頁)によれば、同書第一四〇頁「2.5.4 流動層」の項に、「下から吹上げる流体中に固体粒子を浮遊懸濁させながら、いわゆる“dynamic suspention”の状態で吸収、乾燥、吸着などの単位操作や、あるいは反応を実施する方法を流動化法(fluidization)と称し、その状態の層を流動層と呼ぶ。」と記載されていることが認められ、本願第一発明で用いられている流動化床が、右記載に係る「流動層」と同じ技術内容を指すものであることについては、当事者間に争いがない。

3 次に、引用例記載の発明の技術内容をみると、成立に争いのない甲第五号証(引用例)によると、活性汚泥法による下水や廃水の浄化法において、活性汚泥を沈着させた沈降体を処理槽中に入れるか、取り付ける場合があるが、この方法では、バラバラな沈降体が沈着物の付着によつて閉塞し、空気と下水又は廃水が通る距離が短くなることから、定期的に操作を止めて設備を清掃する必要があつたという欠点を有していたため、引用例記載の発明では、この欠点を解消するため、沈降体(固体粒子)として処理槽内を動くことのできるものを用い、沈着物の付着する沈降体を連続的又は間欠的に槽内を循環させて、沈着物の付着した固体粒子をほぐして過剰の沈着物を取り除き、これによつて清掃を行い、空気の流通を詰まらせることのないようにすることを目的及び発明の概要としたものである(引用例第一ないし第七〇行)ことが認められる。

4 そして、審決が本願第一発明と引用例記載の発明との相違点について判断するに当たり、「引用例においても、微生物が付着した固体粒子が緩く充填された状態で循環流を形成し、しかもある場合、重力の方向とは異なつた方向にも運動することが記載されているから、この場合該固体粒子は相互に異なつた方向に運動しながら廃水中に浮遊しているものと判断される。」とした部分については、原告も認めているところ、前掲甲第五号証によると、引用例に、同記載の発明における下水又は廃水の処理の方法についてさらに次のような記載があることが認められる。

「清掃の目的に対して、槽内で可動であり、最大の表面積を与えるバラバラな沈降体を使用する。」(第一頁第五六ないし第五九行)

「沈降体が水に比べて、同じか、重いか、軽いかにより、浮遊するか、表面に浮かぶか、底に沈むかの傾向となる。これらの沈降体を循環させるには、外部からの力を働かせなければならない。」(第一頁第七六ないし第八二行)

「沈降体が水より重い場合には、例えば、この物体の運動は、槽底付近の上向き流に対して通常の操作に必要とするよりも大量の空気の導入が行われる。沈降体への空気の吹込みの衝撃により、沈降体は上へ押し上げられる。」(第一頁第八三ないし第九〇行)

「水より軽い沈降体を使用する場合には、外力は反対方向でなければならない。すなわち、物体の比重により、物体の望ましい循環又は運動を起こすよう、重力又は自然の浮力に逆らう方向に外力を働かせなければならない。」(第一頁第一〇六行ないし第二頁第三行)

「一般的に、沈降体は生物学的浄化に必要とする以上に曝気されない。物体の循環を行う目的で導入される余分の量の空気は、電気的タイムスイツチにより間欠的に作動するフアンによつて間欠的に導入される。」(第一頁第九七ないし第一〇五行)

「空気又は水の噴出あるいはその両者による物体の循環は、機械的手段により促進される。あるいは機械的手段だけで物体を循環させることもできる。垂直方向に外力を働かせようとする場合には、使用される沈降体の比重により、空気又は水の噴出、あるいはその両者を、垂直に、上方又は下方に向ける。しかし、ある場合には、浮力又は重力の方向に対して垂直あるいは水平方向からある角度傾けて沈降体を運動させることにより、ある方向に沈降体を運動させることが望み得る。」(第二頁第八ないし第二二行)

「空気供給管は、Fig.1に揺動管として示している。(中略)下水処理プラントの正常の操作中は上述の管が揺れ動くことにより、槽中の全容量が均一に曝気される。もし上述の管がFig.1に示すように垂直の位置に止まつておれば、沈降体は矢印で示した方向に回転するであろう。これに反し、沈降体が槽壁の付近で停滞すれば、点線で示したように、上述の管が端部の位置に移動して、壁付近の上述の沈降体を回転させる効果があるだろう。」(第二頁第八六ないし第一〇二行。Fig.1については、本判決別紙図面(2)参照)

「Fig.1に示した下水槽中の物体が、最初から水より重いか、あるいは水より重くなるように汚泥によつて荷重されていると仮定(し)、(中略)十分な空気が管aを通れば、管の上にある物体は矢印で示すように上方に動かされる。管aのすぐ上の空間はこのようにして空になり、曝気されていない物体がこのあいた空間に入り込み、空気流の影響下にきて、上に押し上げられる。上昇した物体は、液面の近くにある物体を横に押しやる。押しやられた物体は脱曝気されて沈むようになる。この場合、水より重くなるので、槽壁で底部に下降し、また循環される。」(第二頁第一一六ないし第一三七行)

「Fig.1のように一本だけの管を使用する場合には、揺り動かされる一本の管を用いて、空気の分布の調整がなされる。この管が停止した場合は、断面のある特定の部分だけが影響を受けるが、上述の管が揺れ動けば、全断面が影響を受けることになろう。」(第三頁第一四ないし第二一行)

右の記載からすると、引用例記載の発明は、処理槽内の廃水中に、活性汚泥付着沈降体を入れ、槽底から空気を導入して曝気し、生成汚泥が沈着した沈降体に、外力、特に正常の操作中よりも大量の空気を噴出させて沈降体を槽内で循環させ、過剰の沈着物を除去するという方法を採用したものであるということができる。

そして、前記3の認定事実及び右に認定した引用例の各記載によれば、引用例記載の発明における沈降体(固体粒子)を循環させるのは、沈着物の付着した沈降体をほぐして沈着物を取り除き、これによつて清掃を行い、空気の流通を詰まらせることのないようにする目的を達成するためであり、循環の手段として沈降体に対し、通常より強い空気の吹込み、あるいは水の噴出の外力を用い、しかも沈降体を連続的又は間欠的に循環させているものである。

5 これに対し、前判示のとおり、本願第一発明では、高い流速での運転を可能にして廃水の処理効率の向上を図ることが目的とされたもので、この目的を達成するために、均一で上向きで連続的に流される廃水によつて、固体粒子床が全体的に押し上げられているものであり、したがつて、床の厚みが拡げられたような状態になつている流動化床を形成させたものということができる。

そして、前記2で認定した本願明細書の発明の詳細な説明の項の記載における、流動化床形成のための技術内容からすると、右のような流動化床における床構造は、引用例記載の発明におけるような、通常より強い流れの導入や、それらの間欠的な導入等の操作では、形成し得ないものというべきである。

したがつて、引用例記載の発明においては、本願第一発明におけるような流動化床を形成していないものということができる。

6 審決は、「本願第一発明には単に流動化床を形成すると規定されているだけで、その構成要件として流速等がいかほどのものなのか具体的に何ら規定されていないから、本願第一発明も、固体粒子は(引用例記載の発明と)同様に相互に異なつた方向に運動しながら廃水中に浮遊している状態を排除しているものということはできない。」と認定、判断した。

しかしながら、前記2で判示したように、本願第一発明における流動化床を規定するのは、固体粒子の比重と廃水流速との関係及びそれによつて形成される床の状態等であり、審決が挙示した「相互に異なつた方向に運動しながら廃水中に浮遊している」という固体粒子の運動状態のみが、本願第一発明における流動化床を規定する唯一の要件であるものということはできない。

したがつて、本願第一発明の流動化床中における固体粒子の運動に、審決が認定した右のような状態が存するとしても、このことをもつて、本願第一発明の流動化床が、引用例記載の発明における固体粒子充填床の廃水中の固体粒子の運動状態と実質上同じものであるということはできないというべきである。

7 原告は、審決が、本願第一発明と引用例記載の発明との一致点として、引用例記載の発明では「固体粒子を循環運動させてクリーニングを行つているから、固体粒子上に過剰に形成した微生物を攪拌によつて除去する本願第一発明と実質的に相違するものとは認められない。」とした認定の誤りを主張するので、この点について検討を加える。

本願第一発明における方法では、「前記担体上に形成した過剰のバクテリヤ生長物を攪拌除去せしめ、それによつて、処理中に担体上の生体の薄層をいかなる所望の厚さにも保持する」(本願第一発明の要旨(c)項)ものであるところ、前掲甲第二号証によると、本願明細書の発明の詳細な説明の項に、次のような記載があることが認められる。

「炭素酸化反応およびBOD除去は、拡がつた床で進行するので、バクテリヤは担体粒子の表面上に成長する傾向がある。時間の経過後、チエツクしないと床粒子は厚い層を形成しがちであり、集塊および/あるいはにかわ質の物を形成する程度に拡がる。これが生じることを許すと、生物学的反応のために利用できる表面積が非常に減り、処理法の効率が相当に減少する。更に集塊は、その比重が減るために拡がつた床の外に運び去られる傾向がある。(中略)この問題を克服するために、過剰のバクテリヤ生長を好適には機械的に粒子より取除」く(本件願書添付の明細書第一三頁第二〇行ないし第一四頁第一七行)。

「好適な具体例において、粒子の外側表面から過剰のバクテリヤを除去するために粒子をその場で処理する。過剰なバクテリヤ生長物は回転する可撓性攪拌器によつて容易に浮遊物、集塊または床粒子から取除かれる。攪拌器は床を刺激し、過剰の生長物を除く。攪拌器は流動化床の高さを連続的に制御し得る。」(同第一五頁第六ないし第一二行)

「処理の間、粒子上のバクテリヤ生長は、通常の光学装置或いは他の型の固体感知器Hによつて床のひろがりの関数として制御される。床のひろがりが既定の高さに達すると、感知器或いは装置が働き、床粒子は摩砕などによつて再生し、過剰生長物を取除く。機械的な可撓性攪拌器Kは好適にはカラム頂点に設けられ、過剰生長物を取除く。」(同第一八頁第四ないし第一一行)

「テストのうち、生物学的生長物は回転柔軟性のポリエチレン攪拌器によつて連続的に取除かれ、一定に保持された。」(同第二一頁第一二ないし第一四行)

これらの記載を参酌して本願第一発明の「前記担体上に形成した過剰のバクテリヤ生長物を攪拌除去せしめ、それによつて、処理中に担体上の生体の薄層をいかなる所望の厚さにも保持する」という構成をみると、この構成は、流動化床による廃水処理操作を止めることなく、カラム頂部の攪拌器により過剰なバクテリア生長物を連続的に取り除くことを意味するものであるということができる。

そして、この攪拌の目的とするところは、固定粒子担体(固定粒子)上に形成した過剰のバクテリア生長物の除去にあり、したがつて、その目的が達成しさえすれば足り、流動化床の内部を攪拌することを意図したものではないのであつて、バクテリアの生長により比重が減少し浮かび上がつた固定粒子担体から、過剰のバクテリア生長物を機械的に除くのであるから、カラム頂部を攪拌するのが好適であるものということができる。

これに対し、前記3、4で判示したところによると、引用例記載の発明では、沈着物が付着してくつついた沈降体(固体粒子)をほぐし過剰の沈着物を取り除き、これによつて清掃を行つて、空気の流通を詰まらせることのないようにしたものであり、この清掃のために廃水中の沈降体を床の下部を含めて処理槽内を循環させるものであつて、この循環は、機械的攪拌や空気の衝撃力によつて行われているものである。

したがつて、攪拌といつても、本願第一発明と引用例記載の発明とでは、その適用個所と目的とが異なつているものというべきであり、引用例記載の発明では「固体粒子を循環運動させてクリーニングを行つているから、固体粒子上に過剰に形成した微生物を攪拌によつて除去するという本願第一発明の場合と実質的に相違するものとは認めることができない。」とした審決の認定は誤りである。

被告は、本願第一発明の要旨(c)項の記載における攪拌の意味を、原告主張のように、限定して解釈することはできず、攪拌手段である水あるいは圧縮空気ジエツトを用いて床に攪拌渦等を作ることも含まれている旨主張する。

しかし、右に判示したところによると、(c)項の右記載は、流動化床を攪拌して廃水処理を中断せしめることのないような攪拌手段に限定しているものというべきである。被告の右主張は理由がない。

8 本願第一発明の作用効果について判断する。

(1) 前掲甲第二、第三号証によると、本願明細書の発明の詳細な説明の項に次のような記載があることが認められる。

本願発明「の他の目的は、従来法に比べて高い流速で運転するに適する効率のよい廃物処理法を提供することである。」(本件願書添付の明細書第六頁第一二ないし第一四行。前記1でも判示。)

「本発明の流動化床処理法の他の実質的な長所は、この流動化床システムに(よつて)達成された予測できない程の高い流速と除去効果である。」(同第八頁第七ないし第九行)

「本発明は、バクテリヤが馴化されうるBOD含有流体の処理に適用できるが、増量或は余剰の第2次処理システムに一番容易に適うものである。廃水の完全な2次処理のために設計されると、本発明は特に土地利用が制約された場合に、過負荷の従来の細流濾過プラント或は活性スラツジ処理施設に備え付けることができる。」(同第八頁第一二ないし第一九行)

「本発明方法と従来方法との比較データを次にあげる。」(昭和五一年八月二〇日付け手続補正書の第四頁第一、第二行。この比較データは、本判決別紙(3)のとおり。)

右比較データによると、<1>比較表面積が、本願第一発明の方法における装置では、1000平方フイート/装置の立方フイートであり、回転デイスク式の装置では50平方フイート/装置の立方フイート、滴下濾過器式では25平方フイート/装置の立方フイートであつて、本願第一発明の方法における装置では後二者のそれぞれ二〇倍、四〇倍の生体付着面積があること、<2>典型的なビオマス濃度MLVSS、すなわち混合液中の全懸濁固形物のうちの強熱減量分、実質的にはバクテリアの濃度(mg/l)が、本願第一発明の方法では、純粋酸素A。S。(バクテリア用に、空気ではなくて純粋酸素を用いた活性汚泥による生物学的廃液処理法)に比し四倍の、懸濁生長(バクテリア用に空気を用いた通常の活性汚泥による処理方法)に比し一〇倍のバクテリア濃度が用いられていること、<3>本願第一発明では、以上の他の方法に比し、五ないし四〇倍の、一日で除去されるBODポンド量が得られることが理解できる。

そして、本願第一発明には、以上の記載にあるとおりの作用効果を奏するものというべきである。

(2) 被告は、本願第一発明で予測できないほどの高い流速が得られるとの点は、作用効果というよりもむしろ構成であり、高い流速ではカラムの通過時間(滞留時間)が短くなつて、一回の通過によるBOD値の減少は小さくなるから、流速の大きさのみによつて作用効果を判断することはできない旨主張する。しかし、廃水処理の効果を考えるに際しては、注入BODに対するBOD除去率のみではなく、単位容積、単位時間当たりのBOD除去率も重要な判断材料であり、右(1)で認定した本願明細書の記載によれば、本願第一発明は従来法に比して、単位容積、単位時間当たりのBOD除去率が優れているものということができる。したがつて、被告の右主張の点をとらえて、本願第一発明の奏する作用効果を否定することはできない。

被告は、引用例記載の発明でも、本願第一発明と同じく固体粒子(沈降体)を用い、その上にバクテリアを担持し、かつ流動化床で処理しているから、当然そこにおける装置の単位容積当たり、単位時間当たりのBOD除去量も、本願第一発明と同程度のものであると主張するが、引用例記載の発明が流動化床での処理を行つているものでないこと、前記5で判示したとおりであるし、前掲甲五号証によると、引用例には、BOD除去量についての記載がないことが認められるから、被告の右主張は理由がない。

(3) また、被告は、本件出願当初の明細書の記載によると、実際のスウエツジに対する除去効率は低いし、その後の手続補正書記載の実験例におけるデータが、どうして右と違う数値となつたのか不明であるし、従来の酸素法の除去効率が約九〇%であることからすると、高いものとはいえない旨主張する。そして、前掲甲第二、第三号証によると、本件出願当初の明細書の発明の詳細な説明の項第二二頁に、実施例2におけるデータの表の記載があり、そこでのデータは、スウエツジに対する除去効率が四ないし二二%であり、昭和五一年八月二〇日付け手続補正書の第三頁第一二ないし末行及び第五頁に、除去効率が九〇%とか五四ないし六八%であるという記載があることが認められる。しかし、出願当初の明細書の発明の詳細な説明の項第二二頁の右記載のデータは、右甲第二号証により認められるとおり、沈降体上のバクテリアの馴化が不十分な段階におけるものであり(第二三頁第八ないし第一〇行)、かつ、その段階においてでさえ、一応の効果が達成されていることを明らかにするものである。なお、馴化された段階における効果については、右(2)で判示したとおりである。

(4) 被告は、都市下水処理場の場合に行われる従来の活性汚泥法でも、除去効率は約八五%となるように操業されているので、本願第一発明の効果は高くはない旨主張する。

しかし、被告がこの点を立証するため提出した成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(「改訂二版用水廃水便覧」昭和四八年一〇月三〇日丸善株式会社発行第一一二三ないし第一一二五頁)においては、処理に要する時間などの処理条件についての記載がなく、前記本願第一発明におけるデータとの対比はできないものといわなくてはならないし、成立に争いのない乙第二号証の一ないし三(「廃水の活性汚泥処理(改訂版)」昭和五三年九月三〇日株式会社恒星社厚生閣発行第一五一ないし第一五三頁)は、本件出願の優先権主張日より後の刊行に係るものであるから、被告の右主張を採用すべきものとする証拠にならない。そして、他に被告の右主張事実を認めるべき証拠はない。

被告はまた、本願第一発明でも、その実施に当たり、攪拌器によつて攪拌しているから、引用例記載の発明の方が余分の攪拌動力を必要とするということはない旨主張するが、前記7で判示したところによると、本願第一発明において、可撓性攪拌器は、流動化床の上端部を攪拌するのみであり、その動力は問題とするほどのものでないいうべきである。被告の右主張は理由がない。

9 以上判示したところによると、審決は、本願第一発明と引用例記載の発明との間の一致点の認定を誤り、また、両発明の間の相違点についての判断を誤り、さらに、本願第一発明が奏する作用効果を看過、誤認したものであり、ひいて、誤つて本願第一発明の進歩性を否定し、さらには誤つて本願発明につき特許を受けることができないと判断したものというべきであるから、違法であつて、取り消されるべきである。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

1 廃水より有機炭素を除去し、生化学的酸素要求量を下げる方法において;

(a) 廃水および、流動化に適う固体粒子担体に、種付けにより付着された有機炭素を酸化するに適う生体から、流動化床を作り;

(b) 充分な量の酸素を前記床に曝気せしめ、該生体がそこを通る廃水の前記生化学的酸素要求量を減少せしめ;そして、

(c) 前記担体上に形成した過剰のバクテリヤ生長物を攪拌除去せしめ、それによつて、処理中に担体上の生体の薄層をいかなる所望の厚さにも保持することを特徴とする前記の廃水から有機炭素を取除く方法。

2 BOD少なくとも約五〇mg/l含む廃水の生化学的酸素要求量を減少させる処理法において;

(a) 廃水および、流動化に適う固体粒子担体に種付けによつて付着した他給栄養性生体から、前記廃水を床〇・〇九m2(一平方フイート)当り約二二・七~一五一・四l(六~四〇ガロン)/分の流量で前記担体を含む垂直カラムの中を流すことによつて流動化床を作り;

(b) 廃水中の生化学的酸素要求量一mg当り少なくとも約〇・一~一・五mgの酸素で該床中に曝気し、前記生体がそこを通る廃水の生化学的酸素要求量を減少せしめ;

(c) 前記床粒子から、過剰のバクテリヤ生長物を、前記床の下行流部分において、前記粒子の比重を増加させるために、該粒子の攪拌によつて、機械的に除去し、それによつて前記過剰生長物を剪定し、それによつて処理中に担体上の生体の薄層をいかなる所望の厚さにも保持する

ことを特徴とする廃水の生化学的酸素要求量を減少させる処理法。

(別紙図面(1)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図画は左のとおりである。

別紙図面(1)

<省略>

別紙図面(2)

<省略>

<省略>

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